第83回 ―経過観察―
三寒四温を繰り返し、春はすぐそこ。「あったかくなったら広い公園にでも行きたいワン」とワンコも首を長くしている。実はうちのワンコ、先月足を痛めた模様。2年ぶりの出来事に飼い主は少し青ざめたが、今は何事もなかったかのように元気だ。
こやつらは「足ぐねってしもた」とも「腰痛で困ってます」とも「お腹が痛い」とも言わない。何も言わない。
そんな意味では永遠の赤子だ。赤子は泣いて訴えることもあるが、ワンコは鳴かない。
なので、病院に行くか行かないかは、飼い主の直感に委ねられる。
食欲は常に旺盛で、基本マイペース。人のお顔はよく覚え、歓迎の舞いを披露したら定位置に収まる。飼い主には「おやつ」と「就寝」のサインを出した時だけ走り寄ってくる。
が、この日はこっこない。「あんた、昨日おかしな着地の仕方した時にぐねったか?」手足にゆっくり触れてみる。これで痛そうに鳴けば、脱臼か骨折の可能性もあるので日曜といえど病院に行かねば。
痛がる様子はない。状況をお嫁ちゃんに電話で伝え、万が一の出動に備えてパジャマではなく、スエット姿で早めに寝た。
数時間後、私の胸元にあがってきて全身を震わせるなんて想像だにしていなかったけれど。
「いっ痛いんか?さっ寒いんか?だっ大丈夫か」ワンコの背を摩る。
こわくて一緒に震えながら「あかんたれの飼い主やな。まあ、しゃーないわ。互いの運命という事で、健やかなる時も病める時も共にいておくれ」そう語ると、ワンコはベッドのど真ん中で寝息をかきだした。ベッドの端っこで「くるん」とまるまる飼い主。
翌朝・・・起き上がり動作がおかしかったので、朝一番で動物病院を受診した。まっ犬も人間と同じで、レントゲンは骨しか映らない。筋肉やケンの様子まではわからず、痛み止めを飲んで経過観察ということになるのだが。
ちなみに生まれ落ちた瞬間、命といっしょに病を授かった私は、経過観察64年目( ´∀` )ハハッ
いつものワンコに戻った頃
「動物病院で頂ける3日でピンシャンするこの薬、私も一度飲んでみたいわ」というジョークを飛ばした。すると、ヘルパーさんが帰った後には、白い薬袋に「犬用」と太字マジックの文字・・・。私のキャラにまだ慣れていなかったのね(@_@)
確かに見た目の90歳越えに加えての発語困難者だけどさー。ワンコの薬に手を出す勇気はまだないわー。
40年前「言語障害の君も冗談を言うんですね」と大学の先生に驚いた顔をされたことを思い出して‥。「みんながみんな千夏っちゃんみたいに不真面目に生きてないんよ。私は好きだけどさー」そう言ってくれた同級生のことも思いだして…人生の途中で思わぬ病を持った彼女とも、最近、互いの経過観察の報告もしていないことを思い出した。
ともだちには
「だんだん歩けなくなってきてるってことも、発語も厳しくなってきてることもなかなか言いづらくてさー。で、会いたいんだけど、私も貴女が好きだから現状報告をためらっている」って言わなきゃね。
「うっそー。千夏っちゃん私のどこが好きなん?」って彼女なら絶対聞くはず。
うーん。まじめなところ( ´∀` )答える私に
あははははーと笑うであろう彼女の笑顔も思いだす。